第108回島根大学サイエンスカフェを開催しました

公開日 2022年11月30日

第108回島根大学サイエンスカフェ

「なぜ地球温暖化は解決しにくいのか」

令和4年11月28日(月)15時~16時10分

 講師:島根大学 法文学部社会文化学科 教授 吹野 卓

 

 今回の島根大学サイエンスカフェでは、吹野教授より「なぜ地球温暖化は解決しにくいのか」をテーマに講演を行いました。

 最初に、令和4年10月にロンドンの美術館に展示されていたゴッホの「ひまわり」に若者がトマトスープをかけた事件を例として、社会に訴えかけるためにはどのようにすればいいのかとの問いかけがありました。

 そして、地球温暖化の問題はなぜ解決しにくいのか?を、人々が集まって創っている社会構造(かたち)、そしてその構造(かたち)を維持していく仕組みといったものから考える学問である社会学から今回は考えていきました。

 温暖化をもたらしているのは「資本主義市場経済」という経済システムであるという考えのもと、資本主義市場経済は、(1)際限ない経済成長を前提としている「成長という宿痾」、(2)貨幣によって測られた需要による「資源の不適切な配分」、(3)需要拡大のための「欲望の喚起」、(4)コスト削減のための「人の収奪」によって回っており、その社会構造の中で生み出された価値観・恐れ・政治権力が、その社会構造を維持する機能を果たしているがために、地球温暖化を生み出すこの資本主義市場経済という社会構造は変化しにくいものとなっているというお話がありました。

 また、日本での二酸化炭素排出量のデータを見ると、家庭での排出量は全体の約20パーセントであり、資本主義市場経済の中では個人レベル・家庭レベルで努力しても、温暖化対策としては十分ではなく、温暖化解決を強く推進していくためには政治の争点化が必要であるとの考えを示されました。ただ争点化するためには大きなエネルギーが必要であり、政治的な声を上げることを恐れたり、多少の声をあげてもムダだという無力感を持っていたりする現状ではなかなか難しいと感じるが、抗議活動が起こっていることを知るだけでも意識が違ってくるとのお話もあり、地球温暖化について日本で世界で何か起こっているのかを知っていくことがまずは重要だと感じました。

 参加者からは「便利な生活と自然保全を並行していくことはやはり難しいのでしょうか?」との質問があり、吹野教授からは「正直、便利な生活と自然保全を並行していくことは、よほどの画期的技術革新でもない限り難しいと思う。また、便利な生活とは異なる「豊かな生き方」もあるのではないかと思う。自然保全と両立する「豊かな生き方」ならば目指すことができるのではないでしょうか。」との回答があり、「豊かな生き方」とは何かを考えるきっかけに今回のサイエンスカフェがなれば幸いです。

 

 今回は33名の参加がありました。参加者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。

 

 次回は「建築ってなんだろう? ~牛乳パックを『建築』にするコツ~」(講師:総合理工学部 教授 千代 章一郎)をテーマに1月8日(日)に開催しますので、ご参加お待ちしております!

 

 

吹野講師の講演の様子

 

 

 

【お問い合わせ】
  研究・地方創生部 研究推進課
     0852-32-9844