公開日 2023年11月30日
島根大学人間科学部の授業である「芸術療法論」を取材しました。
今回の授業では受講生が1人1作品「コラージュ」を作り、班ごとに共有しました。
芸術療法とは、絵画・音楽・詩歌(俳句・連句)、文芸、ダンス、箱庭、心理劇、陶芸、園芸など多種類にわたる表現活動を通して行う心理療法の総称です。
ではなぜ心理療法でこのような手法が用いられるのでしょうか?
治療には、多くの場合、意識レベルよりも深いレベルにおける心のはたらきが重要になってきます。その意識レベルより深い無意識の作用は“イメージ”に認められます。
そこで“イメージ”がきわめて重要な役割を担う「芸術療法」が治療に用いられます。
今回の授業で扱うのは「コラージュ」です。
授業は2回にわたって、個人での制作と班での共有を行いました。
コラージュとは、雑誌類から「ここを使いたい!」と思った部分を切り取り、台紙の上にレイアウトして、自分好みに貼り付けていく技法です。
頭であまり考えずに、使いたいものを使いたいように使って自分の世界を作っていきます。
まず、雑誌の山から気になるページを探します。
気になったところを切り取っていきます。
A4のケント紙の上に好きなように貼っていき…
完成です。
これは私が実際に作ったコラージュです。
バラバラだった“ピンときたもの”を自分の思うように1つにしていくのが楽しかったです。
他の受講生も、はじめは和気あいあいとした雰囲気でしたが、時間が経つにつれ作品作りに没頭していった様子でした。
作り終えた受講生からは「楽しかった」「満足」といった声や「これでいいのかな」「わからない…」といった声が聞こえてきました。
1回目の授業はこれで終わりです。授業時間は100分ですが、持ち帰って続きを制作する学生もいました。
2回目の授業では、5~6人の班に分かれて作品を共有しました。
まず、1分間、1人目の作品を黙ってみんなで見て味わいます。
次に、作者がその作品について2分ほど説明します。
そして、班員たちはそれぞれ1分ほど感想や質問を話します。
これを班員全員分行います。
他の人の作品はそれぞれに個性がありました。
全面に隙間なく貼るのか、空間を残すのか。1色でまとめるのか、カラフルにするのか、白黒にするのか。文字を使って表現するか、文字は使わないのか…。
自分にはなかった発想も知ることができて面白かったです。
また、他者からの感想をもらえることで、自分と違った捉え方を知り「そう言われればそう見えるかも」といった発見ができたことも楽しかったです。
(学生広報サポーター 取材・撮影 淺井明日葉)
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参考文献
・『心理療法ハンドブック』乾吉佑他編、創元社(2005)
・『心理療法とイメージ』河合隼雄編、岩波書店(2000)
・『現代芸術を学ぶ』京都造形芸術大学編、角川書店(1999)