第13回「島根学」日本農業をめぐる国際情勢

公開日 2014年01月30日

第13回「島根学」は1月10日、本学のホールで行われ、農林水産省農林水産政策研究所所長の渡部靖夫氏が「日本農業をめぐる国際情勢-島根農業の発展方向を考える」と題して講義しました。一般聴講生14人を含む約250人が聴講しました。

渡部氏は出雲市出身で、農林水産省で農業金融、農業白書などにたずさわった後、1991年からOECD(経済協力開発機構)の食料農業水産局で勤務されました。渡部氏はOECDに赴任して、1987年のOECD閣僚声明が農政改革の原則をうたったものであり、この原則に沿って我が国の農政も動いていかざるを得ないと実感されました。

渡部氏はOECDの成り立ちを紹介した後、1987年のOECD閣僚声明は、それ以後の世界の農業政策の基本となる重要な声明であったにも関わらず、EU とアメリカの思惑が反映されたものであり、当時の開発途上国が意見を出しにくい側面もあったと述べました。当時の日本は英語やフランス語で経済理論を操り、世界各国と国益につながる交渉をする技術が十分ではなく、この声明をあまり深く検討もせずに批准してしまったため、現在にもその影響が見られるとしました。

WTO(世界貿易機関)やGATT(関税および貿易に関する一般協定)などのなりたちや狙いを紹介し、日本の農業もグローバル化の流れにあることや日本の農業は世界の中でも特に保護水準が高いことなどを示しました。また直接支払制度やFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などについて解説しました。

日本は今後、1987年のOECD閣僚声明に国益を反映できなかった失敗から学び、国内においては透明性の高い情報を提供して理解を得ること、国外においては課題を積極的に提起することや、優れた交渉技術を駆使できる国際人材を育て、多国間と連携することが必要だと述べました。

最後に、島根農業の発展方向として、生産コストの削減と規模拡大、生産者が流通まで担うような農業の6次産業化や輸出産業による高付加価値化、特に中央政府頼みではない、地域の独自性の発揮が求められていると主張しました。

 

講義をする渡辺靖夫氏
講義の様子

お問い合わせ

教育企画課