インターンシップで自分の志向に気づく(総合理工科学部・樋野 丈一郎)

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Q まずは樋野さんご自身の専門や現在関心を持っていることについて教えてください。
A 私は総合理工学部数理科学科に所属しています。現在興味を持っているのは微分方程式の研究です。微分方程式に面白さを感じるのは、それを解くことによって未来予測ができると考えているからです。例えば、アナグマの数とウサギの数を変数に設定して微分方程式を解くと、それぞれの個体値の変化が予測できるのですが、実際に検証したところ微分方程式と同じ結果が得られたという研究があります。さらに、変数に詳細な環境条件を設定して店の客の出入りを予測したりすることもできるのではないかと感じています。微分方程式は経済活動の場面など、実社会の様々な現場でも使用されています。

Q もともと数学が好きだったのでしょうか。
A 高校時代は得意な教科でした。勉強は苦しいものですが、数学だけは勉強していて苦になりませんでした。問いに対する回答を導き出す過程において、よりスマートな回答方法やシンプルな解き方が分かった時に爽快感が得られます。そこに面白さを感じています。大学では総合理工学部の理工特別コースに入ることも勧められたのですが、もっと自由にやりたいことをしようと思って現在のコースに所属しています。

Q 大学では高校で教科として学ぶ数学よりももっと自由に勉強や研究ができるという印象がありますが、どうでしょうか。
A 数学ができるから数学科を選んだのですが、数学という学問を突き詰めようというよりは、好きなことを見つけよう、世界や視点を広げようという思いで入学しました。入学後はユースホステルクラブに所属し、毎月県外等に旅行に行って、地元の方に話を伺っておすすめのスポットを聞いて回ったり、登山に行ったりと積極的に活動しました。おかげで大学に入ってコミュニケーション能力や実践力が養われたと感じています。

Q 今年のギャップタームで行った活動について教えてください。
A 夏に3つの企業のインターンシップに参加しました。最初は、8月5日から9日まで、書店のセンターで新規入荷商品の棚番号を付けたり、在庫登録を行ったほか、併設する店舗でCDの返却作業に携わったりしました。次は8月27日に、広島の中古物件買取・販売業者のワンデイインターンに参加しました。そこでは業務説明を受けた後に業務のデモンストレーションとしてワークショップを行いました。ワークショップでは一定の条件のもと実際の中古物件をリフォームしてプレゼンするというものでした。最後は9月2日から6日まで、食品会社で工場見学と業務体験、視察訪問などを行いました。

Q インターンシップに参加した結果いかがでしたか。
A これまで、自分自身がどのような仕事に向いているのかわからなかったのですが、実際に経験してみて、人と直接関わる仕事が向いているのではないかという気づきを得ました。実は、高校の途中までは周りの人と関わるのが得意ではなかったのですが、活動的な友人の影響を受けて人と話すようになったり、人に勉強を教える経験をしたことなどを通じて徐々に改善されました。大学ではコミュニケーションを取るのが楽しくなりました。3つの企業それぞれに異なるインターンシップを経験したことで、自分に合う・合わないの確認ができたように思います。まだ志望業界を絞り込んではいませんが、不動産業に興味を持つきっかけにもなりました。

Q 今回のインターンシップの経験で得た学びは何ですか。
A 繰り返しになりますが、自分がどういう仕事に向いているのかという気づきが得られました。また、インターンシップ先でプレゼンを行う機会もあったので、人に伝える力も少しは身に付いたと思います。書店では、最終日にどのような本屋さんを作りたいかというプレゼンの課題が与えられました。数日間の経験の中で感じたことをふまえて、短時間で整理してスライドにまとめ、プレゼンしました。インターンシップを通して「いらっしゃいませ」などの挨拶が少ないと感じたので、お客様とのコミュニケーションを大事にする本屋さんを作りたいとプレゼンしました。実は書店でもそれが課題として認識されていたようで、プレゼンの後に評価のコメントをもらえました。

Q 人に自分の意見や主張を伝えるために大事なポイントとは何でしょうか。
A まずはプレゼンしたい内容について、筋道を通すことが大事だと感じました。伝えたい情報に対して、必要な情報が欠けていたり道を逸れたりすることなく、順序だてて論理的に構成することが大事だと学びました。また、私は早口になりがちなので、ゆっくり話すことを心掛けるよう指摘されました。いろいろな人に伝えるためには、論理的かつ分かりやすいプレゼンが求められているのだと気づきました。論理的に筋道を立てて分かりやすく伝えるという点では、数学的な思考に似ているのかもしれません。

Q 1,2年生の頃は夏休みや春休みの期間にどのようなことをしていましたか。また、ギャップタームが長く設定されていることについてはどう思われますか。
A 1年の頃は大学祭実行委員会に所属して、大学祭に向けて毎日のように活動を行っていました。夏休みの半分は実家に帰ったり旅行に行ったり、前期で疲れた体をリフレッシュしました。ギャップタームの長さについては、その人次第かもしれませんが、あらかじめ計画的に、意識して有意義に過ごせるようにしておいた方が、密度の濃い経験ができると思います。もし、今興味があることが少ないのなら、インターンシップを早めに経験することも大事だと思います。私は3年生でインターンシップに参加しましたが、自分の適性を知ることは早めから準備しておいた方がよいと感じました。もちろん、インターンシップだけではなく、大学や家を飛び出したり、旅行にいったりと様々な経験をすることも大事だと思います。